牛オタが非オタの彼女に牛さんについて軽く紹介するための10項

先日のLT岐阜のLightningTalkセッションで僕がLTしたのを例のエントリ風にしてみました.
細かいところが結構苦しかったです.

まぁどのくらいの牛オタがそういう彼女をゲットできるかは別にして


「オタではまったくないんだが,しかし自分のオタ趣味を肯定的に黙認してくれて,その上でまったく知らない牛の世界とは何なのかちょっとだけ好奇心を持っている」


ような,オタの都合のいい妄想の中に出てきそうな彼女に,牛さんのことを紹介するために見せるべき10ネタを選んでみたいのだけど.
あくまで「入口」なので,機能的に過大な負担を伴う実技系のネタは避けたい.
あといくら牛さん的に基礎といっても,古びを感じすぎるものは避けたい.
牛好きが無角和牛育種の歴史で無角のアバディン・アンガスの存在は外せないといっても,それはちょっとさすがになぁと思う.
そういう感じ.


彼女の設定は

  • 牛さんの知識はいわゆる「松坂牛」的なものを除けば,肉牛と乳牛は違う品種の牛だと知っている
  • 農業の知識はあまりないが,動物園動物などの動物知識はある
  • 初デートに牧場を提示してもどんびきしない


という条件で
まずは僕的に.出した順番は実質的には意味がない.

和牛・黒毛和種

まぁいきなりここかよ,おも思うけど,「和牛定着以前」を濃縮しきっていて「和牛定着後」を決定づけたという点では外せないんだよなぁ.品種数も黒毛和種を含めて4品種だし.
ただここでオタトークを全開にしてしまうと,彼女との関係が崩れるかも.
この情報過多な品種に対して,どれだけさらりと,嫌味にならず濃すぎず,それでいて必要最低限の情報を彼女に伝えられるかということは,オタ側の「秦のコミュニケーション能力」の試験としてはいいタスクだろうと思う.

反芻(反芻胃)

あれって典型的な「おたくが考える一般人に受け入れられそうな牛の特徴(そうオタクが思い込んでるだけ.実際は全然受け入れられない)」そのものという意見には半分賛成,半分反対なんだけれど,それを彼女にぶつけて確かめてみるには一番よさそうな素材なんじゃないのかな.
「牛オタとしては,反芻胃内でメタン生成菌がつくりだすメタンが地球温暖化の原因として挙げられていることは酪農家が地球環境を改善するために考えないといけない問題だと思うんだけど,素直に言ってどう?」って.

呼称

ある種のヨーロッパ人が持っている牛への憧憬と,ライフサイクルと密接に関係した牛さんの呼び名へのこだわりを彼女に紹介するという意味ではいいなと思うのと,それに加えてやたらと分類して名前を付けたがるという
「童貞的なカッコよさ」を体現するox(去勢牛の呼び名)
「童貞的に好みな雌牛」を体現するheifer(未経産雌(処女)牛)
の2つの呼称をはじめとして,オタ好きのするアルファベットの並び順をちりばめているのが,紹介してみたい理由.

霜降り肉

たぶんこれをみた彼女は「ドラクエのアイテムだよね」と言ってくるかもしれないが,そこが狙いといえば狙い.
こういう肉が日本でしか手に入らないこと,アメリカでは全然人気がないこと,アメリカで大量生産されて,それが日本に輸入されてもおかしくはなさそうなのに,日本国内でしかこういうのがつくられないこと,なんかを非オタ彼女と話してみたいかな,という妄想的願望.

種牛

「やっぱり動物は実際に目で見て触れ合わなきゃだよね」という話になったときに,そこで選ぶのは「乳牛搾乳体験」でもいいのだけれど,そこでこっちを選んだのは,だれよりもでかい体をもっているのにも関わらず,種牛のもくもくと仕事をこなす素直さが好きだから.
たくさんの子供がいながら人工授精技術によって一生童貞,っていう切なさが,どうしても僕の心をつかんでしまうのは,その「捨てる」ということへの諦めきれなさがいかにもオタ的だなあと思えてしまうから.
人工授精技術を僕はいろいろめんどくさいこととは思わないし,なくなったら農家は困るだろうけど,一方でこれが田中義剛やムツゴロウさんだったら自然交配にこだわっただろうとも思う.
これからの農業のビジョンや,雄牛に生まれた牛に対するウェルフェアも合わせて,そんなことを彼女に話してみたい.

放牧

今の農家で放牧をする人はほとんどいないし,若手の研究者で放牧を研究する人もそんなにいないのだけれど,だから紹介してみたい.
牛さんが肉用専用になる前の段階で,牛さん農家の哲学とか放牧の技法とかは役牛だった時に頂点に達していたとも言えて,こういうクオリティの飼育方法が日本の村社会でこの時代にかかっていたんだよ,というのは,別に僕自身がなんらそこに貢献していなくても,なんとなく牛さん好きとしては不思議に誇らしい.
いわゆる牛さんでも牛舎での牛さんを知らない彼女には,見せてあげたいなと思う.

BSE

社会問題にもなった「牛の病気」あるいは「牛を飼う際の倫理」をオタとして教えたい,というおせっかい焼きから見せる,ということではなくて.
「他の人はみないようにしている四川で牛を見る」的な感覚が,オタには共通してあるのかなということを感じていて,だからこそ21世紀の食の安全の主役はBSE以外にあり得なかったとも思う.
「原因不明の病気の病原体を解明する研究がフロンティア」というオタの感覚が今日さらに強まっているとするなら,その「オタクの気分」の源はBSEプリオン説にあったんじゃないか,という,そんな理屈はかけらも口にせずに,単純に楽しんでもらえるのかどうかをみてみたい.

屠畜

これは地雷だよなぁ.地雷が火を噴くか否か,そこのスリルを味わってみたいなぁ.
こういう生々しい死を感じさせるえげつなさを乗り越えて,純粋に解体職人の職人気質と技術が非オタに受け入れられるか気持ち悪さを誘発するか,というのを見てみたい.

安福号

9特徴まではあっさり決まったんだけど,10つめは空白でもいいかななどと思いつつ,便宜的に安福号を選んだ.
和牛から始まって安福号で終わるのもそれなりに語呂はいいだろうし,神様になった飛騨牛として岐阜帝国の存在を全国に知らしめた種牛でもあるし,飛騨牛のおいしさもあいまって紹介する価値もあるのだろうけど,ほかにももっといい牛の特徴がありそうな気がする.


というわけで,僕のこういう意図に沿ってもっといい10つめはこんなのどうよ?というのがあったら教えてください.
「だめだこの学生は.俺がちゃんとしたリストを作ってやる」というのは大歓迎.
こういう試みそのものに関する意見も聞けたら嬉しい.